閉伊川 河口水門設置問題 ―― 資料およびリンク集
               *上から新しい順〜2011年9月16日


宮古onWeb


■閉伊川河口水門整備:概略 通行可能な管理橋設置、4門式で航路も確保 13年度着工目指す−−宮古 /岩手
2013年1月23日 毎日新聞
 宮古市の津波防災対策として閉伊川河口に水門整備を計画している県は22日、市議会全員協議会で概略を示した。構想時の5門式から4門式に変更して事業費を圧縮、漁船の航路を確保した。本格的な航路を設けた初めての水門、水門には並行して一般車両が通行可能な管理橋も設置する。13年度の早い時期の着工を目指す。

 県河川課と県宮古土木センターが説明した。それによると、水門は光岸地と藤原地区の左右両岸を結んで整備し、長さは154・4メートル、河床からの高さは34・5メートル。航路が設けられない3門には、カーテンウオールと呼ばれるコンクリート壁(高さ7・1メートル)を水面上に固定。普段は最低でもその下1・2メートルを水が流れているが、津波来襲時はカーテンウオールと並んで上流側に取り付けた鋼鉄製ゲートが落下してコンクリート壁の下をふさぎ、海抜10・4メートルまでの津波を防ぐ。
 航路部は幅が34・85メートル、水面から管理橋までの高さが11・6メートル。カーテンウオールはないが、来襲時は2段式のゲートが落下して10・4メートルの高さまでふさぐ。
 管理橋は15・3メートルの高さで設置し、災害復旧工事用のクレーン車が通れるよう幅を6メートルにした。しかし、両岸の取り付け道路幅は国の災害復旧事業の補助金交付が4メートルまでのため6メートルに広げるには市費負担の必要があるという。総事業費は155億3000万円。
 水門は自家発電装置を備え、遠隔操作する。年度内に住民説明会を開き、詳細設計を取りまとめたうえで用地買収に入る。完成までには5、6年はかかるという。【鬼山親芳】

■閉伊川水門に漁船用の扉 県内初の「航路部」
2013年1月23日 岩手日報
 宮古市は22日、県が津波防災施設として建設する閉伊川水門(全長154・4メートル、高さ10・4メートル)の概略設計を明らかにした。門扉は当初案の5カ所から4カ所に減らし、漁船が通過する航路部を設置。鍬ケ崎地区と藤原地区を結ぶ高さ15・3メートルの管理橋も設ける。2013年度早期の着工を目指し、5〜6年程度で完成を見込む。
 水門は閉伊川河口部に建設され、10・4メートルの高さに整備される防潮堤に接続。門扉(幅34・8メートル)は固定式のコンクリート壁と可動式の鋼製ゲートを組み合わせた構造となり、非常時はゲートを水中に下ろして津波を防御する。
 門扉の1カ所は航路部とした。水面から管理橋の下端まで11・6メートルの高さを確保。非常時は2段式の鋼製ゲートを閉じる。閉門作業は遠隔操作できるようにして、内部電源も確保する。航路部を設けた本格的な水門は県内初となる。

■閉伊川河口水門整備:設計は漁船航行に配慮 県、宮古漁協に説明
2012年5月26日 毎日新聞 地方版
 宮古市の宮古湾津波防災対策で閉伊川河口に水門整備を計画している県は25日、宮古漁協(大井誠治組合長)に水門方式を選択した経緯や事業概要などを説明した。
 建設予定区域には同漁協が漁業権を持っている。同漁協であった説明会には、県側から沿岸広域振興局宮古土木センターの加藤郁郎所長ら、漁協からは理事らが出席。県は漁船の航行に支障のない水門設計とする考えを伝えた。漁協側からは漁船が岸壁に引き続き係留できるよう要望などがあった。
 両岸の地権者に対する説明会は10日に開かれ、県は6月中にも現地測量調査に入る意向を示している。【鬼山親芳】

■水門計画を事実上容認 宮古市議会
2012年4月21日 岩手日報
 宮古市の閉伊川河口に県が整備方針を打ち出した水門計画について、市議会復興対策特別委員会(田中尚委員長、委員12人)は20日、委員長提案の「閉伊川堤防かさ上げ整備を求める意見書」の提出を反対多数で否決し、水門計画を事実上容認する判断を示した。25日の市議会臨時会で委員長が最終報告を行う予定。
 20日の特別委は、15日に県が主体となって同市で開催した水門計画の市民説明会の議論を踏まえ、議会としての今後の対応を協議した。
 委員長提案に対する討論では「多くの市民が水門に不安を持っている。自然の力は川に逃がすべきだ」とする賛成意見の一方で、「今後の津波対策を急ぐために意見書を出すべきでない」との反対意見があった。委員長を除く採決は反対6、賛成4(欠席1)となり意見書提出を見送ることにした。
 田中委員長は「否決は議会として水門計画を受け入れるということ。市民に諦めの感情が広がっているという声もあった」と話す。

■水門、受け入れへ 宮古市
2012年4月21日 朝日新聞
 県の水門建設計画に反発していた宮古市議会復興対策特別委員会は20日、対案の堤防かさ上げ案を4対6で否決し、水門受け入れを決めた。1月の計画表面化以来、県や市に異例の市民説明会を2度開かせたが、「決定済み」との県の姿勢を崩せず、議会内には手詰まり感が出ていた。津波対策を結果的に遅らせることへの危惧が強く、姿勢を転じた。25日の本会議で確認される見通し。
 県はこれまで見合わせていた詳細設計や漁協との協議に入り、予定通り今後4年以内の完成をめざす。
 水門に反対していた田中尚・同特別委員長(共産)は終了後、「残念だが、25日の本会議に『水門受け入れ』の報告をする」と語った。同委は5月で任期切れとなるため、この日が態度決定の期限だった。
 堤防かさ上げは、昨年9月、議会の復興提言に盛り込んだ内容でもあり、この日も水門賛成派でさえ「まだどちらがいいか分からないが、専門家の意見を尊重するしかない」と発言に迷いをにじませた。
 それでも、山本正徳市長が受け入れの最大の理由とした、堤防かさ上げでは津波で国道45号などの橋が落ちる危険を考慮。300人以上が詰めかけた1回目の市民説明会に比べ、15日は200人と減り、「市民の熱も冷めてきた」(水門反対の市議)ことを背景に水門受け入れに転じた。
 決定を受け、山本市長は「もっと説明を早くすればよかった」と反省を語った。県の佐藤悟・県土整備部技監は「宮古に限らず、水門や防潮堤は技術的な理由で決めており、住民の意見で決めるものではない。ただ、住民説明について市ともっと相談するべきだった」と話した。
 水門は、同市中心部の閉伊川河口に約170億円かけて造る。ほかの水門で津波を跳ね返したことが被害を広げた可能性もあり、市民の間でも議論が広がっていた。

■閉伊川河口水門整備:宮古市議会復興対策委、事実上容認
 堤防かさ上げは否決
2012年4月21日 毎日新聞 地方版
 宮古市議会復興対策特別委員会は20日、宮古湾津波防災対策で閉伊川の堤防かさ上げを求める知事あての意見書提出を否決し、県が計画し市も了承している閉伊川河口への水門整備を事実上容認した。25日の臨時議会で田中尚委員長が報告し、承認される見通し。同市議会は昨年9月、津波エネルギーを閉伊川で減衰させるための堤防かさ上げを決めた委員長報告を受けて市長に提言した経緯があり、市民には分かりにくい結果に議会の見識が問われそうだ。
 特別委は県が15日、開催した水門整備計画の市民説明会を受けて開かれた。田中委員長が特別委としての今後の対応について閉伊川堤防のかさ上げ整備を求める知事あての意見書提出を臨時議会に提出したいと提案。出席11人のうち田中委員長を除いて採決の結果、賛成4、反対6の賛成少数で否決された。
 賛成しなかった委員からは「かさ上げには宮古大橋など3橋の架け直しが必要で、事実上不可能だ」「津波防災対策を早く実施すべきだ」などといった意見が出た。当初、水門整備案に難色を示しながら意見書提出に賛成しない委員が出たことが否決につながった。

■水門設置案 受け入れへ 宮古市議会「堤防整備」案否決で
2012年4月21日 読売新聞
 宮古市議会復興対策特別委員会が20日、開かれ、県が計画する閉伊川河口の水門設置案を受け入れる方針を決めた。この日の委員会で、水門設置案が浮上する前に市がかさ上げを検討してきた、同川の堤防整備を求める意見書を25日の臨時議会に提出する案が反対多数で否決されたため。
 委員会では、水門設置案と堤防かさ上げ案の長所と短所を比較。「水門で津波を防ぐという考え方に不安を持つ市民の意見を重視すべき」だとして、水門設置案に反対し堤防かさ上げ案に賛成する意見が出た。しかし、堤防をかさ上げして津波を上流に逃がすと、「橋の架け替えや道路のかさ上げなども必要になり、まちづくりに大きな影響を及ぼす」と、堤防かさ上げ案に反対する意見も出た。採決の結果、堤防整備を求める意見書提出案は賛成4、反対6で否決された。
 市議会は昨年9月、堤防かさ上げ案を市に提言。しかし、市は12月に県から水門設置案の提案を受けた際、議会に説明しないで了承したため、市議会から「議会を軽視している」という声が上がっていた。

■水門方式で決着 宮古市議会特別委
2012年4月21日 産経新聞
 宮古市の閉伊川河口の津波防災で、県が示した「水門方式」に反対意見が出ている問題で、同市議会の復興対策特別委員会(田中尚委員長)は20日、対応を協議した。
 堤防のかさ上げ方式を求める意見書を採決する案が提案されたが、反対多数で否決され、事実上、水門方式が了承された。
 同特別委は昨年9月、堤防かさ上げ方式を求める提言をまとめたが、県は年末に突然、水門方式に決定し、市議らの反発を招いていた。


■閉伊川河口水門設置:宮古で県の説明会 反対意見相次ぐ
2012年4月16日 毎日新聞 地方版
 宮古市の宮古湾津波防災対策で、閉伊川河口に水門整備を計画している県は15日、市立宮古小体育館で開かれた住民説明会で、「水門は堤防かさ上げよりも合理的だ」と重ねて理解を求めた。住民からは反対意見が相次ぎ、双方の溝は依然埋まらなかった。
 県河川港湾担当の佐藤悟技監は水門整備計画案を市に提示したのが昨年12月と遅れたことについて「技術的な検討がそこまでいっていなかった。まちづくり検討委員会に間に合うよう示せなかったのは申し訳ない」と陳謝。そのうえで、「水門整備は決定している事業で、できるだけ早く測量調査に入りたい」と述べ、見直す考えのないことを強調した。
 県はまた、市議会復興対策特別委員会から提出された水門併設の管理橋についての質問に「一般にも開放するか市と検討するが、開放することになれば事業費の負担が必要になるかもしれない」と市にも応分の負担を求める考えを明らかにした。【鬼山親芳】

■水門方式に批判相次ぐ 宮古で住民説明会
2012年4月16日 岩手日報
 宮古市の閉伊川河口に整備方針を打ち出した水門計画について、県は15日、同市横町の宮古小体育館で市と共催の住民説明会を開いた。質疑では住民が希望した河川堤防かさ上げではなく、水門方式を選択した政策決定過程や県の資料提示の仕方に批判が相次いだ。県は「事業着手のタイミングではない」とし、今後も地区別の住民説明などで理解を得る努力を続ける方針だ。
 市民ら約200人が参加。県は津波シミュレーションを基にした説明で「(水門、堤防の)どちらも明治三陸大津波級までは防げるが、堤防方式はまちづくりに大きな影響がある」とし、堤防を整備した場合は宮古大橋、宮古橋、JR鉄橋の架け替えや市街地再整備の必要性を強調した。
 これに対し、市議の一人は「水門でなければまちづくりが変わるというのは一種の脅しだ」などと、水門ありきと受け取れる姿勢をただした。市民からも「水門は見直しもあるのか」と迫る意見や「事後承諾の説明会になっている」など厳しい声が飛んだ。

宮古市東日本大震災地区復興まちづくり計画

宮古市「地区復興まちづくり計画」

■19地区で高台移転 宮古市、復興計画の策定完了
2012年3月31日 岩手日報
 宮古市は、30日の東日本大震災復興本部会議で、復興推進計画と地区復興まちづくり計画を決定した。地区内で100戸以上が被災した田老、赤前、金浜、高浜、津軽石を含む大小19地区で高台移転事業を導入。災害危険区域を設定して、条例で3段階に分けて住宅建築を規制する方針も示した。これで昨年6月の復興基本方針決定後に進めた全計画の策定作業が完了。2012年度は本格的に復興事業が動きだす。
 復興まちづくり計画は大規模被災した10地区ごとに策定。田老地区は、住民が提言した複数の高台移転候補地から、浸水地域に近い乙部地区の高台を選択した。平地は、一部を除いて大半が災害危険区域に設定される。
 災害危険区域は、防潮堤を新たに整備後、東日本大震災クラスの津波が再び襲来した場合の予想浸水深を基準に設定。条例により2メートルを超える区域は住宅建築を禁止、1〜2メートル以下でも構造規制をかけることにした。条例は6月をめどに市議会に提案する方針。
 同市では、まちづくり計画の素案づくりに住民が参画。先月末に10地区で市長への提言が出そろった。山本正徳市長は「約束の3月末に間に合いほっとしている。市民の皆さんと検討会を立ち上げ、話し合って良かった。スピード感を持って計画を遂行したい」としている。

■東日本大震災:宮古市「まちづくり計画」策定
 閉伊川の水門整備盛る
2012年3月31日 毎日新聞 地方版
 宮古市は30日、19年度までの9年間に取り組む震災復興事業を盛り込んだ「復興推進計画」と、被災した33地区の土地利用を示した「復興まちづくり計画」を策定した。まちづくり計画では、河口付近の浸水域が広がる可能性があるとして、設置に賛否が分かれた閉伊川の水門について、「整備する」と盛り込んだ。
 推進計画は、昨年10月の基本計画を基に市民からのパブリックコメントを経て策定した。「すまいと暮らしの再建」「産業・経済復興」「安全な地域づくり」の3本柱に沿って実施する278事業を示した。
 まちづくり計画では、東日本大震災と同クラスの津波が来た場合、防潮堤の整備や道路のかさ上げをしても、1メートル以上の浸水が予想される区域を含む30地区を、「災害危険区域」に認定。2メートル以上の浸水が予想される区域では、住宅の建設を認めないなどの建築制限を設け、30地区のうち19地区の計約1100世帯で高台への集団移転を実施する。
 「万里の長城」といわれた高さ10メートルの防潮堤を津波が乗り越えた田老地区では、第1防潮堤の内側から国道45号を越える一帯を危険区域に設定した。
 一方、中心市街地は、防潮堤のかさ上げで浸水を防げるとして、震災前と同じ場所での再建が可能となり、災害公営住宅を建築して他地区の住民も受け入れる。【宮崎隆】

■記者の目:これからの大津波防災=鬼山親芳
2012年3月23日 毎日新聞
 「万里の長城」と比喩も雄大だった岩手県宮古市田老(たろう)の田老防潮堤。「世紀の大事業」と官民あげて歓迎した同県釜石市の釜石湾口防波堤。東日本大震災では世界に冠たるこれら巨大な人工構造物でさえも自然の猛威を防げなかった。三陸の先人たちが「津波てんでんこ」(津波では家族でも互いに信頼し、てんでんばらばらに逃げる)の言葉で残してくれた生き延びる知恵を文化というならば、「人工構造物に過大の期待を寄せてはいけない」という体験もまた文化として後世に伝えていいのではないか。2大構造物を信じて命を落とした何人もの悲劇に、その思いは深まる。
◇10メートルの防潮堤を信じて逃げ遅れ
 「3メートルや4メートルの津波、大したことはない。ここの防潮堤は10メートルもある。お父さんはそう言ったんです」。私の郷里・宮古市の小中学校で同級生だった田老の花輪節子さん(69)は亡くなる直前の夫征夫さん(当時70歳)とのやりとりを教えてくれた。身を揺さぶる地震に夫婦は外に飛び出したが、避難する住民から津波の高さ予想(3〜4メートル)を教えられて家に戻った。その直後、大量の水が家を破って入り節子さんは水中をもがきながら2階へ。征夫さんは10日後に遺体で見つかった。
 花輪さんの家のすぐ前は小高い山なので、容易に避難できた。しかし、夫婦は逃げなかった。征夫さんが防潮堤に大きな信頼を寄せていたのは、二重の堤防が海の前に立ちふさがるように築造されていく様子を小さいころから見てきたからだ。「お父さん、逃げよう!と、なんで説得しなかったか」。節子さんは仮設住宅に新しく備えた仏壇の遺影に目をやって悔やんだ。地元のNPO関係者も「田老で亡くなった人の多くが防潮堤を信じ切っていて逃げなかったようだ」と言う。津波は防潮堤を軽々と乗り越えた。防潮堤内側住民の死者・行方不明者は165人に及ぶ。
 「世界で最も深い海の防波堤」とギネスブックに認定された釜石湾口防波堤。起工も完成も市民がちょうちん行列で祝った防波堤は無残にも破壊された。国土交通省釜石港湾事務所は「津波到達を6分遅らせ、約1300人の命が救われたことが解析やアンケート結果から証明された」と一定の効果を強調する。
 だが、今後の戒めとするなら、「防波堤があってもこれだけの人が亡くなった」と死者に目を向けた教訓を大事にすべきだ。防波堤内側臨海部の死者・行方不明者は市の調査で253人にのぼり、市全体の死者・行方不明者の24%になる。震災2日後の3月13日、私は釜石市中心部に近い大渡(おおわたり)橋のたもとで、運ばれてくる遺体の数に目がくらんだ。53体目という話に「こんなに大勢の人が」と震えたが、実際はその何倍もの人たちが犠牲になっていた。
 私の住む宮古市では今、市街地の津波対策として主要河川の閉伊川河口に県による全長158.2メートル、高さ10.4メートルの水門の設置計画が浮上し論議を呼ぶ。数十〜百数十年に1度の頻度の明治三陸地震津波級まで防ごうというのだ。一方で水門の効果に疑問を抱き、漁船の航行や景観を心配して反対する人たちは、津波を川にさかのぼらせてエネルギーを減衰させるために護岸のかさ上げを提案する。
◇かさ上げ当てにせず高台移転へ
 岩手県では、防潮堤を中心とした沿岸保全施設(総延長113キロ)のうち67キロが被災した。防潮堤のかさ上げ工事が今後、本格化する。だが、死者・行方不明者95人を出した大槌町赤浜地区は県が示した14.5メートルの復興防潮堤を「当てにはならない。今の6.4メートルでいい」と断り、防潮堤のかさ上げに頼らず高台移転を希望する。コンクリート一辺倒から距離を置く防災法を選択したのは、どんな人工構造物でも大津波には勝てないという教訓からだろう。
 いつもなら港に津波の写真を撮りに走るところだが、地震におじけづいて地面にへたり込んでしまった「臆病記者」からささやかな助言をしたい。「人工構造物はどんなに巨大でも万全ではない。臆病になって逃げること。防潮堤は心の中に築け」
【ことば】田老防潮堤と釜石湾口防波堤
 田老防潮堤は田老地区で911人が犠牲となった昭和三陸地震津波(1933年)の翌年から築造を始め、79年に完成。海面からの高さ10メートルの堤を「X字形」に二重に巡らせ、総延長2433メートル。震災では約580メートルが崩壊したが、全体を高さ14.7メートルにかさ上げする予定だ。
 釜石湾口防波堤は北堤、南堤に分かれ、総延長1660メートル。国直轄事業で31年の歳月と約1200億円をかけ09年に完成。東日本大震災では北堤がほぼ全壊、南堤も半分以上が崩壊。事業費約490億円で原形復旧を目指す。
【鬼山親芳(きやま・ちかよし)=三陸支援支局宮古駐在】


■閉伊川河口水門設置:宮古市議会、知事あて異例の意見書 「説明責任果たせ」
2012年3月14日 毎日新聞 地方版
 宮古市の閉伊川河口に県が津波防災対策の水門を整備する計画で、宮古市議会は定例議会最終日の13日、市民への十分な説明責任を果たすよう求める知事あての異例の意見書案を全会一致で可決した。県内市町村議会が東日本大震災の復興計画の進め方を巡って県政に意見書を提出するのは初めてとみられる。
 意見書は「市民に説明もなく整備を決定したのは遺憾だ」としたうえで、市民の不安を取り除くため十分な説明を求めている。
 「十分な説明責任」の文言で、説明会の開催を事実上要請した。県は1月31日に市議会全員協議会で、2月12日にも市が開いた説明会で市民の質問に答えている。山本正徳市長が堤防かさ上げから水門整備に方針転換する理由となった宮古大橋などの落橋の可能性を指摘したとされる専門家を招くか、市民も対象にするかなどは市と協議する。
 山本市長には前川昌登議長と復興対策特別委員会の田中尚委員長が本会議前に会い、議会と相談なく水門整備を了承したことについて、同様に十分な説明責任を果たすよう口頭で申し入れた。山本市長は「今後、重大な政策決定では議会と相談したい」と約束したという。
 前川議長と田中委員長は取材に対し、「保留とした市長への計画撤回の申し入れはこれで必要がなくなった」と述べた。【鬼山親芳】

■閉伊川河口水門設置:撤回申し入れ保留 宮古市復興対策特別委、市長に説明責任求める
2012年3月13日 毎日新聞 地方版
 宮古市街地の津波防災対策で県が閉伊川河口に水門を設置する問題で、同市議会は12日、復興対策特別委員会が、計画を了承した山本正徳市長に提出を予定していた計画撤回の申し入れを保留することを決めた。この日の全員協議会で賛成、反対の意見が拮抗(きっこう)したためだが、再度県から計画説明を求めたうえで市長に申し入れるか判断する。特別委の方針が議会全体の賛同を得られずに棚上げされる事態となった。
 全員協では「復興特別委の多数が水門設置の見直しを求めたのだから特別委の判断を認めるべきだ」などとする賛成に対し、「時間の制約がある中、市長判断は正しい。申し入れの必要はない」などといった反対意見も相次いだ。
 市長が議会に相談なく計画を了承したことについては、「性急で問題だ」などと問題視する意見が多く出された。このため前川昌登議長と田中尚復興特別委員長が13日の定例議会終了後、政治姿勢を反省し説明責任を果たすよう市長に口頭で申し入れることにした。
 全員協では「何いってるんだ」「うるせえ」などと罵声(ばせい)も飛んだ。田中委員長からは「(申し入れ方針が保留され)特別委員会は解散したらいいのか」などとの発言も出た。
 計画撤回の市長への申し入れは2月23日の復興特別委で決まった。議長名で13日にも行うことにし、議会の了承を取り付けるため全員協に諮られた。【鬼山親芳】

■水門計画の撤回要求へ 宮古市議会が市長に
2012年2月24日 岩手日報
 宮古市の閉伊川河口に県が整備方針を打ち出した水門計画で、市議会復興対策特別委員会(田中尚委員長、委員12人)は23日、山本正徳市長に県計画了承の撤回を求め、申し入れを行う方針を決めた。同日、同計画について市を通じて県に再度説明を求めたが、住民合意は得られないと判断。来月12日の議員全員協議会で報告後、議会の総意として議長名で文書を出す見通し。
 水門計画の詳細事業費など事前通告した13項目の質問について、市が県からの聞き取り内容を回答。水門設置で浸水範囲が広がることについては「最大クラスの津波は浸水区域が発生するが、多重防御で人命を守る」とした。
 説明終了後、「100年、300年先を考え結論を急ぐ必要はない。津波エネルギーに逆らうべきでない」(横田有平市議)、「大多数の市民は堤防かさ上げ支持だ。その方向で行くべきだ」(中嶋栄市議)など、水門反対論が多数を占めた。

■宮古市の水門計画 「和解と理解」が最優先
2012年2月19日 岩手日報
 県と宮古市が合意した閉伊川河口への水門設置に、市議会が猛反発している。「市民に一切説明がない」とする議会側に対し「市にはしっかり説明してきた」とする県側。いずれも「市民の意思」が後ろ盾だが、先ごろ市が開催した住民説明会では、水門計画推進への不安や批判が大勢を占めた。
 議会や市民の突き上げにあった山本正徳市長は、説明が遅れたことを繰り返し陳謝した。客観情勢として、市民の意向に配慮が及ばなかったのは明らかだ。その上で、なお「水門は決定したこと」と強弁する市長の姿勢には首をかしげざるを得ない。
 津波防災は、今後のまちづくりと不可分の関係にある。市が昨年12月半ばに水門整備を了承した後、市民に公表したのは約1カ月後の中心市街地のまちづくり検討会。「住民主体の計画作り」を掲げて昨年10月、同検討会がスタートして以降、市は閉伊川河口への水門整備の可能性について「選択肢の一つであり、考えなくていい」との認識を示してきたという。
 予定では今月末にも、地区ごとの復興まちづくり計画を市長に提言する段取り。協議も大詰めの段階に至って、市の突然の「情報提供」に、これまで積み上げてきた議論がないがしろにされたと多くの市民が感じても無理はない。この状態で「住民主体」と言われて、前向きになれる市民がどれほどいるだろうか。
 河川の津波対策は県と市が合意した水門方式か、エネルギーを上流に吸収すべく議会側が主張する河川堤防方式が基本。市議会が昨年9月、津軽石川河口にある水門ゲートの開放を含め、防潮堤のかさ上げや川底の掘り起こしを提言した背景には、市が各地で開いた住民懇談会で示された市民多数の意見がある。市も同調していたという。
 県側の理屈を勘案すれば、その後の協議で市も水門方式を了承した限りは、その責任で市民を説得してほしい−といったところだろう。逆に市議会とすれば、提言に対する見解も示されないまま、事後報告に等しい市の説明は到底納得できないに違いない。
 堤防方式は年数も費用もかさむ。市民の生命と財産を守る使命感からスピードを優先した判断も理解できるとはいえ、市も県も、明確に水門方式に反対する市議会との議論を避けた印象は否めない。
 議会や市民の反発は、もはや水門方式そのものよりも行政側の説明不足に向けられていると言えるだろう。行政と議会、さらに市民との絆が揺らぐ現状は、当座の正常な判断を妨げ、長い復興の道のりに禍根を残しかねない。和解と理解を置き去りにして、事業化を急ぐべきではない。

■#iwaminTV 2012年2月12日住民説明会Live http://ustre.am/_1nyG2:10K4 ほか

■閉伊川河口水門設置:「被災者の気持ち分断」 説明会で住民苦言 宮古市長「計画は決定したもの」
2012年2月14日 毎日新聞 地方版
 宮古市の宮古湾津波防災対策で県による閉伊川河口への水門設置を巡り、計画を了承した市は12日、住民説明会を市役所で開いた。山本正徳市長は住民への説明遅れを陳謝する一方、「計画は決定したものだ」と撤回する考えのないことを強調した。住民からは「水門は最初から決まっていたのではないか」「被災者の気持ちが二つに分断されてしまった」といった厳しい意見や苦言が相次いだ。【鬼山親芳】
 山本市長は市議会が提案している閉伊川の防潮堤かさ上げでは宮古大橋などの架け替えが必要で、新たな街づくりを迫られ、工期も15年、20年とかかる難点を指摘。「人命と財産を守るベターな方法が水門だ。住民とは何回でも話し合う」と理解を求めた。しかし、「決定済み発言」には、会場からどよめきが上がった。
 住民からは「水門があると津波は湾岸をぐるぐる巡り、漁業に打撃を与える」「経済性が高いからといって(宮古駅周辺の)内陸だけを水門で守る発想はやめてほしい」「市長の一声で決定されるのは残念だ」などと発言が続出した。
 住民約400人が参加し、うち入室できなかった約100人はエレベーターホールや階段などでマイクを通じて傍聴した。山本市長ら幹部のほか、県からも佐藤悟河川港湾担当技監らが出席した。説明を聞いた男性(77)は「被災地の意見を無視してはいけない。50年、100年後の命を預かっているのに市や県には責任感が感じられない」と話した。
 住民説明会は市が昨年12月、県からの水門設置提案を了承したことに対し、市議会が「唐突だ」と反発しているのを受け、経緯と水門の優位性を理解してもらおうと開いた。市議会は昨年9月、閉伊川で津波エネルギーを減衰させるのが有効だとして、防潮堤のかさ上げ方式を市に提案していた。

■水門説明会 依然反発強く/宮古市
2012年2月14日 朝日新聞
【写真】水門の説明会に詰めかけた市民。いす、床のござでも足りず、2時間半立ち見の人も=宮古市役所
 県が提示した宮古市の閉伊川河口の水門計画をめぐり、12日、同市役所で市民向けの説明会が初めて開かれた。復興のまちづくりの議論終盤に突然表面化した計画で、水門による浸水被害が予想される地区があり、約20人の質問者のほとんどは反対だった。山本正徳市長が「決断を変えるつもりはない」と発言すると一斉に不満が上がった。
 250人以上が詰めかけた。発言した市民約20人から閉伊川水門を積極的に望む意見は出なかった。
 多かったのは、水門が津波を跳ね返すため、水位が上がり、危険が増す宮古湾沿いの地区の懸念。港湾地域で働く女性は「我々の安全対策はどうなっているのか」とただした。「中心部を守るために外側の住民は我慢しろというのか。みんなで立ち直ろうとしてきたのに分断されるのは悲しい」と元教員の男性が話すと拍手がわいた。
 閉伊川は台風であふれたことがあり、河口をふさぐことで水害が拡大するのではと心配する川沿いの住民もいた。今回被害を受けた宮古湾奥の住民は「川と陸をふさいだら、結局津波はこっちにきてしまう」と語った。
 「水門は決定済み」と答えるだけの山本市長に「何のための説明会だ」と不満の声が上がった。傍聴していた無職鈴久名(すずくな)一さん(63)は「市民にも議会にも話さずに大事なことを決めている。説明責任を果たさない行政はおかしい」と話した。

■水門設置案 きょう住民説明
 宮古市 「堤防かさ上げ」方針転換 市民や議会から反対
2012年2月12日 読売新聞
 県が閉伊川(宮古市)河口付近で計画している水門設置案に市民や議会から反対の声が上がり、宮古市は12日、住民説明会を開く。堤防かさ上げ案を提示していた市は昨年12月、県から水門設置の提案を受け、わずか2日後に了承する方針転換をしている。
 市は水門設置案の前に、堤防をかさ上げし、津波を同川上流に流して被害を食い止めることを検討。この案では、国道45号が通る宮古大橋の架け替えが必要になり、総額約235億円が必要になるほか、東日本大震災級の地震が再び起きた場合、今回は被害を受けなかった上流の小山田、南町地区や県立宮古高校のグラウンドなどが津波の被害を受ける危険性がある。県のシミュレーションでは、堤防かさ上げ時の同湾付近の浸水面積は223ヘクタール。
 一方、県が計画する水門設置案は、川の河口に高さ10・4メートル、幅約158メートルの水門を設置するもので、費用は約166億円で済む。しかし、津波が押し寄せると、宮古湾からあふれ出た津波が海岸沿いの鍬ヶ崎、光岸地(こうがんじ)、藤原、磯鶏(そけい)地区で被害が生じる恐れがあり、堤防かさ上げ案に比べ、浸水面積は224ヘクタールと1ヘクタール広い。
 堤防かさ上げ案と水門設置案ともに一長一短だが、市は昨年12月14日、県から水門案の提示を受け、2日後の同16日、この案を了承した。市は災害査定の締め切りが近かったことや年末の多忙さを理由にあげるが、市議からは「相談なく決めた」と非難の声が上がる。
 住民からも批判の声が相次ぐ。磯鶏地区では、昨年11月から練り上げてきたまちづくり計画の素案で「住民ゾーン」としていた地域に浸水域が生まれる。このため、同地区で今月1日、開かれた「まちづくり検討会」で、「磯鶏の人は多少死んでもいいということか」と怒りが爆発した。

■水門に批判 宮古・磯鶏地区
 浸水域拡大と想定「市民をだましている」
2012年2月3日 読売新聞
 県が計画している閉伊川(宮古市)の水門設置案に対し、水門設置時に津波による浸水域が広がると県が想定する磯鶏(そけい)地区の住民から批判の声が上がっている。
 同地区は、東日本大震災の津波で大きな被害を受け、現在、がれきの仮置き場となっている藤原ふ頭がある。
 同地区で1日行われた「まちづくり検討会」で、「磯鶏の人たちは多少死んでもいいということか」「市民をだましている。今までやってきたことは何なのか」と、住民の怒りが爆発した。
 昨年11月からの検討会はこの日が最終回。今月19日、地区住民にまちづくりの計画案を説明し、山本正徳市長に今月末、提言する予定で素案を作ってきた。この日、市の担当者が水門設置案について報告しても、検討会メンバーは納得せず、「水門は認めない。議論を再スタートさせたい」という声が上がった。

■水門新設に宮古市議会反発 「説明なし」市の対応巡り
2012年2月1日 読売新聞
 東日本大震災で太平洋に注ぐ川を逆流した津波による被害が相次いだのを受け、県が閉伊川(宮古市)の河口付近に新設しようとしている水門を巡り、宮古市議会が反発している。同市議会が昨年9月、堤防をかさ上げし、津波を同川の上流に流して被害を防ごうと市に提言していたのに、山本正徳市長ら市幹部が市議会に相談もなく、県が提案した水門設置のほうを選択したからだ。
 閉伊川は同市中心部を流れる川。同市議会は昨年9月、堤防をかさ上げし、津波を同川の上流に流して被害を防ごうと市に提言。宮古湾につながる津軽石川で、水門を閉めたために周辺地区が大きな被害にあったためで、「津波は河川に逃がす」というのが議会の姿勢だった。
 しかし、県は12月14日、堤防をかさ上げすると、〈1〉上流付近に津波被害を受ける地区が新たに約20ヘクタール生じる〈2〉国道45号の宮古大橋が落ちる恐れがある〈3〉宮古大橋や並行するJR山田線を高くするには事業費がかさむ――ことなどから、水門設置を市に提案。県の計画では、同川河口に166億円を投じ、高さ10・4メートル、幅約158メートルの水門を5年がかりで建設する。
 市はやむを得ないと判断し、同月16日に了承したが、市議会には伝えられず、市議らが知ったのは、今年1月、県の発表や報道などでだった。このため、同月17日の市議会復興対策特別委員会では、議会への説明もなく決定したことに、市幹部を非難する声も上がった。
 31日の全員協議会では、市民約80人も見守る中、県河川課の松本中(みつる)総括課長が水門設置と堤防かさ上げで、浸水域の違いなどを図で示した。市議からは「地震発生後に停電したら、水門を遠隔操作できるのか」「もっと時間をかけて市民の声を聞きながら決めるべきだ」などと厳しい意見が相次いだ。
 これに対し、松本課長は「コストや安全性を考えると水門のほうが実現性が高い。今後も説明を続け、理解を深めてもらうしかない」と話した。
 山本正徳市長は松本課長の説明後、「情報共有が十分でなかったのは私の不徳の致すところ」と市議らにわび、水門設置を選択することになった経緯を釈明したが、市議らは「相談もなく決まったことが非常に残念だ」と納得しなかった。

■水門:閉伊川河口設置に異論相次ぐ 浸水範囲の拡大懸念−−宮古市議会 ◇県「堤防かさ上げより経済的に有利」
2012年2月1日 毎日新聞 地方版
 宮古市の閉伊川河口に県が津波防災対策の一環として水門を整備することが分かり、同市議会は31日、全員協議会を開いて県の担当者から説明を聞いた。県は堤防かさ上げ方式に比べて市中心部の浸水被害が小さいなどの理由を強調したが、委員からは「寝耳に水。河口隣接区域への浸水範囲の拡大や景観などで問題がある」と異論が相次いだ。【鬼山親芳】
 同市議会復興対策特別委員会は昨年9月、閉伊川に津波を遡上させてエネルギーを減衰させるため両岸堤防のかさ上げを提言し、市もその方向で対策の検討を進めてきた。しかし昨年12月、県は水門(全長158メートル、高さ10・4メートル)設置を提案、市も検討の末に了承したことが分かり、議会が反発した。
 この日の全員協で県の佐藤悟・河川港湾担当技監らは水門方式により、市中心部の浸水被害が小さくなる効果のほか、設置費用が約167億円と、堤防かさ上げの約235億円に比べて経済性で有利な面などを指摘した。市との協議で、市民の一定の理解も得られたとの認識も示した。
 委員からは「水門で跳ね返った波により鍬ケ崎や磯鶏地区に浸水範囲が広がる」「景観や生態系、観光への影響が心配」「漁船の往来に支障が出る」といった意見が続出した。
 山本正徳市長は水門設置の了承の報告が遅れたことに陳謝した。
 県や市によると、宮古湾内で計画する堤防の高さ10・4メートルに合わせて堤防をかさ上げしても宮古大橋や宮古橋など3橋の高さが低いため、その付け根部分から津波があふれ出る恐れがあり、橋をかさ上げするには相当の費用がかかるという。また、宮古大橋は橋台の上に載せた構造のため津波で流失する恐れがあり、流失すれば被害がさらに拡大する心配もあるという。

■県の水門案に猛発 宮古市議会
2012年1月18日 朝日新聞
【写真】県が水門設置を計画している閉伊川河口=宮古市役所から
 県宮古市中心部の閉伊川河口部に津波対策の水門を設置する県の計画に、同市議会が猛反発している。水門が逆に被害を広げる危険性があるとして、議会は市とともに堤防のかさ上げを求めていた。17日の市議会復興対策特別委員会では、最近になって県に同意した市の判断にも批判が集中、紛糾した。31日に全員協議会を開き、県の担当を呼んで事情を聴く。
    ◇
 閉伊川は河口部の堤防が高さ5・26メートルしかない。津波はその2倍の高さがあったとみられ、市役所周辺が大きく浸水した。
 県は当初から水門で津波の遡上を防ぐ案を出していたが、同市内の津軽石川や田代川では、水門で跳ね返った津波で被害が別方向に広がっており、「水門さえなかったら……」と地域の反発が強い。市議会は昨年9月まとめた復興計画の提言で、閉伊川では、堤防のかさ上げを検討するように市に要請。津軽石川の水門開放も明記した。
 田中尚委員長は「自然のエネルギーは水門で防ぐよりも上流へ逃がした方がいい」と話す。市も同調していた。現在、大詰めの地域住民による復興まちづくりの検討会も堤防のかさ上げが前提になっていた。
 しかし、国の予算査定に合わせ、県は市に浸水シミュレーションを示し、昨年12月に同意を迫った。
 災害復旧は過去2番目の明治三陸津波(1896年)の高さを基準とするのが国の方針で、国費による堤防のかさ上げは河口から上流方向に約1キロ上る宮古大橋付近までしかできない。しかし、今回級の津波だと、津波はさらに上流にさかのぼり、新たに約20ヘクタールが被害を受けるという。宮古大橋などの落橋危険性もあり、市は水門設置案を受け入れた。
 県河川課によると、水門設置費は約170億円。宮古大橋までの堤防のかさ上げの方が高いという。
 この日の特別委員会では水門を設置した場合、川岸に係留する漁船の往来への影響、地震で水門が自動閉門した際に上流からの水があふれる危険性――なども指摘された。シミュレーションの精度にも疑問があり、市議会は31日の説明後、市に同意撤回を求めるかどうかを協議する。

■閉伊川水門整備に反発 宮古市議会、県に説明求める
2012年1月18日 岩手日報
 宮古市議会復興対策特別委員会(田中尚委員長、12人)は17日、県が同市の閉伊川河口に整備する水門について市に経緯をただした。同市議会は昨年9月、今後の津波防災は防潮堤のかさ上げで津波エネルギーを閉伊川に吸収させるよう市に提言しており、各委員は水門整備は同提言に反することや説明もなく決まったことを批判。市は「被害軽減が防災の基本」と理解を求めたが、31日の市議会全員協議会で県に説明を求める。
 市は、県から昨年12月2日に水門と河川堤防かさ上げの二つの防災手法が提示されたと説明。当初は河川堤防整備を要望していたが、同14日に河川堤防では同市南町や小山田地区で新たな浸水域が出ることなどを県に指摘されたため断念し、同15日に水門整備を了承したという。
 委員は「市が従来の考えと異なる判断をした根拠は何か」「急に出た水門の話に市民は皆驚いている」などと反発。「県は水門ありきだ」と政策決定過程に不信感を募らせる委員もいた。
 熊谷立行・市都市整備部長は「震災より浸水域を狭めるなど被害軽減が市の防災の基本」と理解を求めた。
 同水門は高さ10・4メートル、全長154メートル。事業費は約170億円で県や市の地元負担は実質ゼロになる見通し。5年程度での完成を目指す。県の津波浸水シミュレーションでは設置した場合、上流域の浸水は防げるが、河口付近の藤原、磯鶏、鍬ケ崎地区で新たに浸水域が出る。
 県河川課の冬川修・河川海岸担当課長は「水門の詳細設計を進めていく中で、浸水シミュレーションを示し議会や地元側に十分に説明していくしかない」と話す。
 31日の全員協議会は午後1時半から市役所6階大ホールで開かれ、県の担当者が出席する。傍聴可能。

■県が4河川に水門新設 5年で完成目指す
2012年1月13日 岩手日報
 県は、東日本大震災で被災した沿岸部の新たな津波防災施設として、閉伊川(宮古市)や気仙川(陸前高田市)など4河川の河口付近に水門を設置することを決めた。国の災害復旧事業費を決める災害査定に申請し、整備が認められた。津波が川をさかのぼることを防ぎ、浸水範囲を抑える効果を想定。事業費は各160億〜170億円を見込んでおり、5年程度での完成を目指す。一方、水門の設置で河口付近の浸水域が広がる可能性もあり、地域によっては論議を呼びそうだ。
 災害復旧事業で水門を新設するのは閉伊川(高さ10・4メートル、全長154メートル)、大槌町の大槌川(14・5メートル、148メートル)、釜石市の鵜住居川(14・5メートル、182メートル)、気仙川(12・5メートル、191メートル)の4カ所。
 整備費は概算でそれぞれ160億〜170億円。県や4市町の地元負担は実質ゼロとなる見通しで、県内24地域の防潮堤整備と合わせて5年程度での完成を目指す。
 県は津波防災施設の設定に当たり、浸水範囲のシミュレーションを実施。経済性、まちづくりの観点などから水門の採用が妥当と判断し、地元4市町と協議した上で査定を申請した。
 県によると、水門を設置せず河川堤防のかさ上げなどを実施した場合、大規模な津波によって河川上流域の浸水範囲拡大や橋が損壊する可能性がある。一方、水門の設置により津波時に湾内の水位が高まり、河口付近で浸水面積が広がる恐れもあるという。
 宮古市では今回の津波で、津軽石川河口にある全長189メートルの水門が津波エネルギーを止め、付近の住宅地に濁流があふれて被害が拡大した―との住民の声もある。市議会は昨年9月、水門のゲート開放を市に提言した。 県河川課の松本中総括課長は「想定される水門の功罪を踏まえ、安全性や経済性、地域への影響を考慮した上で市町と相談し、必要と判断した。懸念があることを踏まえ、地元にしっかり説明していきたい」と話す。

■「死んでしまっては…」危険な消防団の水門閉鎖
2011年10月17日 読売新聞
【写真】被災前の摂待水門。水門上部に操作室があり、畠山さんら消防団員が駆けつけた(岩手県宮古土木センター提供)
【写真】操作室ごと流された摂待水門の跡(後方)で当時の様子を語る畠山さん(16日、岩手県宮古市田老で)=増田教三撮影
 東日本大震災が起きた3月11日、岩手、宮城県の沿岸では、大津波警報が発令される中、少なくとも72人の消防団員が水門・門扉閉鎖のため海へ向かった後、死亡・不明となった。
 非常勤特別職公務員とはいえ、普段は一般市民として生活する人たちだ。住民を守るという使命感ゆえに犠牲になったが、これほど危険な業務を現状のまま委ね続けていいのか。「遠隔操作できる水門を」。関係者は悲痛な声を上げている。
 「地震があれば、住民は山へ向かうが、消防団は海岸に向かわなければいけない」。地震後、水門に向かった岩手県釜石市の消防団第6分団副分団長の佐々幸雄さん(58)はそう語る。
 仲間の分団員のうち、別の水門に向かった2人が犠牲になった。2人は港近くの水門を閉めた後、避難誘導中やポンプ車の移動中に津波にのまれたらしい。「団員は各自の判断で水門に向かう。水門を閉めた後、住民が近くにいれば、自分も避難誘導をしただろう」
 釜石市では、187基の水門の閉鎖を消防団や外部業者、町内会に委託。計6人の消防団員のほか、企業の担当者と町内会役員も命を落とした。
 同市は震災前から「消防団員らは高齢化し、開閉操作に時間がかかるため、津波から逃げ遅れる危険性が増大している」などとして水門の遠隔操作化を国や県に要望していた。
 同県宮古市では、遠隔操作機能付きの水門3基のうち2基が作動しなかった。同市の市消防団32分団班長の畠山一伸さん(47)は地震直後、同市内の「摂待水門」から約1キロ離れた屯所に駆け付けた。
 別の団員が水門の自動閉鎖ボタンを押したが、モニターに映った水門は動かない。やむなくポンプ車で水門の上にある操作室(高さ15メートル)に行き、ブレーキを手動解除。迫り来る津波を窓から見て、あわてて車に乗って逃げた。
 津波は水門を乗り越え、操作室の窓から海水が噴き出していた。「少しでも遅れていたら死んでいた」と畠山さん。「多少危険でもやらなければならないことはあるが、消防団員といえども民間人。死んでしまっては何もならない」と語り、故障しない遠隔操作の導入の必要性を訴えた。
 宮城県は「すべてを遠隔操作化するのはコスト面でも現実的でない」として、県管理の水門・門扉約570基のうち利用度が低い門扉166基については普段から閉鎖していた。残りも開閉しやすいよう横引きのスライド式にし、漁業関係者らに門扉は開けたら閉めるよう呼びかけていた。
 岩手県は、復興事業として津波で壊れた水門を復旧する際、電動・遠隔操作できるものにする。県の担当者は「太陽光などの補助電源を付けることなども考えたい」としている。(岡本朋樹、木村雄二)

PDF版「東日本大震災からの復興に向けた提言」
          宮古市議会 2011年9月16日

■東日本大震災:津波を河川に吸収、防潮堤上げを提言
−−宮古市議会復興委
2011年9月17日 毎日新聞 地方版
 宮古市議会の復興対策特別委員会は、津波のエネルギーを閉伊川などの河川に分散・吸収させる提言を盛り込んだ報告書をまとめ、16日開会の定例議会に報告した。
 「復興まちづくり計画への提言」としてまとめた。田老川や神田川、長内川が流れる田老、閉伊川左岸の市街地、右岸の藤原・磯鶏、津軽石川河口に面した津軽石・赤前地区が対象。津波を上流まで流してエネルギーを分散・吸収させるためにはいずれの地区でも防潮堤のかさ上げが必要だと指摘した。特に津軽石・赤前地区では津軽石川水門を開放し、川底のしゅんせつの検討を求めている。水門の開放は異例といえる。
 田中尚(たかし)委員長によると、津軽石・赤前地区では、津軽石川水門にぶつかった津波が住宅地にあふれて被害を拡大させたと証言する住民もいたという。
 津軽石川水門は津波対策のため、県が14年の工期と124億9000万円の工費をかけて07年3月に完成した。189メートルの川幅に上下動するゲート7基があり、海面からの高さは8・5メートル。【鬼山親芳】

■津波水門ゲート開放を 宮古市議会、住民の意見受け
2011年9月16日 岩手日報
▲ 津軽石川の河口近くにある津波対策水門
宮古市議会は地元の意向を受けゲート開放を提言する
 宮古市議会(前川昌登議長)は16日、同市の津軽石川河口にある全長189メートルの津波対策水門のゲート開放を市に提言する。東日本大震災で、住民から水門が津波エネルギーを止めたため付近の住宅地に濁流があふれ、被害が拡大したとの指摘を受けて防災体制の見直しを促す。ただ、建設主体の県は、水門開放は「危険」との認識。各地の水門の防災効果を検証する上で、今後の論議に一石を投じそうだ。
 水門開放を提言する発端は市が各地で開催した住民懇談会で寄せられた声だった。赤前地区では「水門の両脇に水があふれた」「水門で犠牲者が出た」など防災効果を疑問視する意見が相次いだ。
 今回の提言では、津波時は水門開放によりエネルギーを河川域の上流に吸収できるよう現在8・5メートルの河川両岸の防潮堤かさ上げや川底の掘り起こしを提案。河川河口域の水門防災を根底から否定しかねない内容だ。
 これに対し、建設した県は異論をとなえる。河口から300メートル上流にあるこの水門に大津波が到達する前に、両岸の赤前、金浜地区の防潮堤を津波が乗り越える監視カメラ映像も残っており、水門の防災効果に否定的な意見には戸惑いを見せる。
 今回水門を超えた津波は海抜約10メートルと推定される。水門と周囲の防潮堤の高さ(8・5メートル)を超え、想定をはるかに上回る。一方、昨年2月のチリ地震津波では大津波警報が出され、水門付近でも2・6メートルの津波を観測。水門閉鎖で効果を発揮した事例もある。
 津軽石川河口の津波対策水門とは 県が宮古湾奥に注ぐ津軽石川河口に18年の歳月と約125億円をかけ建設。2007年3月完成し、市が管理受託した。全長189メートル、閉鎖時にゲートと一体で波を遮る外壁頂部は海抜8・5メートル。電動で上下する高さ4〜6メートルのゲートが7基ある。明治三陸大津波(1896年)級の津波を食い止めるため水門建設と併せ、河口部の左右両岸計1060メートルの防潮堤を海抜6メートルから8・5メートルに2・5メートルかさ上げした。


■宮古市復興対策特別委員会 宮古市 各種委員会
設置期間 2011年(平成23)4月〜2012年5月
定数   12人
実数   12人
委員長  田中 尚(宮古市議会議員、以下同)
副委員長 加藤俊郎
委員   落合久三
     茂市敏之
     須賀原チエ子
     近江勝定
     中嶋 榮
     横田有平
     藤原光昭
     工藤小百合
     崎尾 誠
     北村 進

岩手日報

朝日新聞
 
毎日新聞
 
読売新聞

産経新聞


宮古市議会 東日
本大震災からの復興
に向けた提言 PDF版


宮古市

宮古市 東日本大
震災地区復興まちづ
くり計画


宮古市 地区復興
まちづくり計画


山本正徳 宮古市長

宮古市復興対策特別
委員会

岩手県

達増拓也 岩手県知事

岩手県県土整備部

岩手県沿岸広域振興
局宮古
土木センター

閉伊川 河口水門設置問題 ―― 資料およびリンク集 宮古onWeb



inserted by FC2 system